タイトル「Another Moon Whistle」
作者名「神無月サスケ」
ジョイスティック対応
正義の味方「Xレンジャー」、敗れる? 「最後の兆し」を警告する「少年A」
ユニークな敵と特技の数々 ダンジョン内の「湧き水」は有効に活用しよう
ストーリーを見失ったら、このおばさんに聞け! 「推論空間」
 夏休み。
それは、両親が別居しているために、はなればなれになっている兄弟が再会し、
ともに過ごすことが許されるとき。

 活発な兄に連れられて、弟はこれまで行ったことのない場所へと向かう。
そこで彼らが目撃したのは、テレビで活躍しているはずの正義の味方「Xレンジャー」が「魔王」に敗れ、
捕われの身となった光景だった。

 それから、少しずつ、まわりの人たちがおかしくなっていく。
ちょっとしたことでケンカになり、自分が正しいと他人をゆずらなくなる。
そして、その背後には魔王の部下らしき少年の姿が見えかくれする。

 少年は警告する。
正義の味方に憧れることの無意味さ。
ほんの些細なことで言い争いをしてしまう人間のみにくさ。
やがて訪れる「最後の兆し」を。

 それでも兄弟は立ち向かおうとする。
もし、正義の味方「Xレンジャー」を助けたら、
自分たちの両親の仲も取り持ってくれるかもしれないと信じて。

 心地のよいBGM、落書きから飛び出したようなモンスター。
まるで「絵日記」のような雰囲気を持つ現代風RPGだ。

 このゲームの魅力として「ほとんどのダンジョンに、最初から行ける」という自由度の高さがあるだろう。
しかも、入口にいる人が「レベル○以上でないと危ないよ」と親切にアドバイスしてくれる。
ストーリーを進めて、それ相応のレベルになってから挑むのも、
あえて低レベルで無謀な挑戦をして全滅をくり返すのも、プレイヤーの自由にゆだねられている。

 クリアに関係のないイベントでしか手に入らないアイテムもあり、
そのための謎解きは、多くのプレイヤーを悩ませる歯ごたえのあるものだ。

 また、戦闘は「力押し」だけでは通用しない戦略性をともなうもの。
このゲームではダンジョンの途中に「湧き水」があり、それを飲めば、HP・MPが回復できる。
アイテムでしか習得できない「特技」も多く、これらを活用すれば、戦闘はぐっと楽になる。
目新しいシステムはないものの、独自色のこいゲームバランスの優れたRPGといえるだろう。

 しかし、このゲームでもっとも印象的なのは「推論空間」と呼ばれるイベントの数々かもしれない。
これは、魔王の味方である少年が、主人公の身のまわりの人たちを「仲たがい」させることから発生するイベントだ。
両者とも自分の主張を曲げず、第三者である主人公たちに「選択」を強(し)いらせる。

 この選択には「正解」はない。
どちらかを選ぶことでゲームオーバーになることはない。
ただ、エンディングへの道のりが少しずつ変わっていくだけだ。
だから、自分が正しいと思える側を選べばいい。
このシステムは、プレイヤーに「自分なりのストーリーを組み立てる」実感を与えることには、成功しているといえるだろう。



 しかし、答えの出ない議論を聞くことは疲れることである。
ある人は、メッセージを読みとばすようになり、深く考えずに選ぶようになるかもしれない。

 ただ、RPGとしての流れを無視してまで、このようなイベントを用意した作者の意図に注目してほしいと思うのだ。

 例えば、あなたは、ほんの些細なことから誤解され、冷たい仕打ちを受けたことがないだろうか?
 少年時代は美しいことばかりではない。うまく自分の考えを言葉にできない「もどかしさ」、
自分なりにがんばってもむくわれない「無力感」。
あなたはこのゲームをプレイすることで、そういう苦い経験も思い出すかもしれない。

 この作品では「推論空間」という特殊なイベントを通じて、
そんな過去の傷を癒すチャンスを与えられているような気がしてならない。

 この作品のメッセージには「他人の考えに身をゆだねるのでなく、自分の考えをしっかりと持ってほしい」というものがある。
例えば、新聞や社会をにぎわす「凶悪犯罪」。
あなたは「嫌な時代になったもんだ」とため息をついているだけかもしれない。
だが、敏感な子供の無防備な胸に、それがどのように刻まれるかを考えたことがあるだろうか?

 だから、一夜漬けのようなプレイではなく、自分のペースでじっくりとプレイしてもらいたいと思う。
もし、交わされる言葉の数々に頭が痛くなったら、プレイをやめて、散歩に出るのもいいだろう。

 そして、このゲームをクリアしたときには、ぜひともあなたなりの、この作品に対する思いを持ってもらいたいのだ。
それが好意的なものであれ、批判的なものであれ、
それこそが作者がこのゲームを作ったうえでもっとも望んだことであるはずなのだから。


(注) この作品は「Moon Whistle(ムーン・ホイッスル)」という同じ作者のRPGの外伝的位置づけとなっています。
ただし、独立したストーリーであるため、「Moon Whistle」のプレイの有無は、面白さに影響を与えないでしょう。
ただ、この「Another Moon Whistle」をクリアして、作者のゲームに興味を持ったなら、
「Moon Whistle」もプレイすることをオススメします。

(Reviewer エスケー)

注意
ゲームの実行にはRPGツクール2000RTP(12.0MB)が必要になります。
ゲーム実行前にダウンロードして、インストールしてください。
すでにパソコンにはいっている方はインストールの必要はありません。

<作者HP>
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