タイトル「ひとかた」
作者名「お竜」
マウス・キーボード対応
 Leafの「痕」などに代表される「和風伝奇もの」サウンドノベル。
 キャラグラフィックはなく、背景画像、BGM、文章のみによる演出だが、
四人のヒロインを見事に書きわけた描写力、物語が進むにつれて事相が一つにつながっていく構成力は見事。

 主人公、南護は高校二年生の男子。
親戚である打追高校の教師、南依絵の依頼を受けて、ありふれた田舎町である打追町にやって来る。
その依頼とは、昔話にすぎないはずの妖怪「牛鬼」を退治することだった。

 主人公には、牛鬼を退治する能力があるらしい。
しかし、主人公はなぜかその方法を思い出せないでいる。
彼が打追町にやってきたのは7月9日で、牛鬼の力がもっとも強くなるのが「牛除け祭」が行われる7月14日。
それまでに牛鬼を倒さなければ、とんでもないことが起こるらしい。

 しかも、打追町の人々はよそ者である主人公に心を開こうとしない。
彼らは何かを隠しているみたいだが、それを主人公に語ろうとしない。
そんな状況で、果たして、牛鬼を倒すことができるのか。
主人公は打追町をかけずり回り、少しずつ、様々なことがらを知っていく。

 選択肢を間違っただけで即ゲームオーバーになるような、難易度の高いアドベンチャーゲームではない。
ただ、数日間の物語ではあるが、文章量が多いので、読むことが苦手な方は、途中で挫折するかもしれない。
しかし、物語にひきこまれたなら、最後まで見届けなければならないと思わせる力がこのシナリオの文章にはある。

 語り手である主人公は、一見、お調子者で、性欲丸出しの言動ばかりが目立つと思われるかもしれないが、
彼が自分の宿命と向かい合っていく過程は感動的だ。
 エンディングまでたどり着いた人は、きっと透明な想いが自分の胸に宿っていることを知るだろう。


【注意】
 この作品は、そもそも性描写を含めた「18歳未満プレイ禁止」のゲームのシナリオとして作られたものです。
 作者サイトで公開されている「DNML版ひとかた」は性描写を削除した全年齢対象作品ですが、
雰囲気は「18歳未満プレイ禁止」ゲームに近いものがあります。
そのようなゲームに不快感を持っている人は、プレイしない方が良いでしょう。

(Reviewer エスケー)
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